
はじめに
「日本に来るマリー・アントワネット・スタイル展、チケットを買う価値はある?」→私の体験では間違いなくあります!!2025年12月、イギリス・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum, V&A)で開催された特別展 『Marie Antoinette Style』 を鑑賞しました。そこには、マリー・アントワネット本人ゆかりの宝石や衣装だけでなく、処刑直前の遺品、そして死後200年以上にわたり彼女がどのように「ファッションアイコン」として語り継がれてきたのかまでが、一つのストーリーとして展示されていました。
この展覧会は、2026年8月1日〜11月23日に横浜美術館で国際巡回展として開催されます。本当に素晴らしかった特別展なので、
・チケットを買うか迷っている方
・展示を見る前の予習をしたい方
・展示を見終わった後に内容を振り返りたい方
・ロンドン展と日本展を比較したい方
の参考になればと思い、このレポートを書きました。
海外の美術展は日本巡回時に写真撮影が禁止になることも少なくありません。その点、V&Aでは全展示エリアが撮影可能だったため、本記事では写真を交えながら展示内容をできるだけ詳しく紹介します。
※この記事では展示の内容を詳しく紹介しています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
※展示内の英語解説は筆者による日本語訳です。意訳を含みます。また写真整理しているのでもしかしたら展示コーナー情報が前後しているかもです
*記事の内容や画像の無断転載・利用は禁止です
この展示の個人的ハイライト
💎本人ゆかりの衣装や宝石
👸処刑後232年間で変わった「マリー・アントワネット像」
👗ディオールやリアーナにまで受け継がれる影響
日本での特別展公式サイト
- はじめに
- 展示内容
- 1. マリー・アントワネット: スタイルの起源 1770-1793 (Marie Antoinette: The Origins of a Style 1770-1793) | マリー・アントワネット本人の豪華絢爛ドレスの数々
- 2. 輝く女王(The Queen of Sparkle) | 232年ぶりに集結したマリー・アントワネットの宝石コレクション"
- 3. 女王のスタイリング(Styling of the Queen) | 王妃のスタイルを生み出した職人たち
- 4. マリー・アントワネットにとっての魔法のような逃避: プチ・トリアノン宮殿(Marie Antoinette's Enchanted Escape: the Petit Trianon) | 郊外宮殿でのカントリー風なリラックスした衣装
- 5. 邪悪な女王(The Wicked Queen) | 悪女」のイメージを作った風刺画
- 7. マリー・アントワネット: 記憶の中で 1800-1940年(Marie Antoinette: Memorialised 1800-1940) | 悪印象回復の裏側
- 8. 魔法と幻想(Enchantment and Illusion) | 戦後、人々が夢見た「マリー・アントワネット」
- 9. マリー・アントワネットの再アイコン化(Marie Antoinette Restyled) | ディオールからリアーナまで──現代に受け継がれるマリー・アントワネット
- 10. お土産コーナー | 現地vs日本限定グッズ比較
- 感想
- 最後に
展示内容
1. マリー・アントワネット: スタイルの起源 1770-1793 (Marie Antoinette: The Origins of a Style 1770-1793) | マリー・アントワネット本人の豪華絢爛ドレスの数々
展示に入って最初に迎えてくれるのは、マリー・アントワネット本人ゆかりの衣装や宮廷ファッション。ここで一気に18世紀フランスへ引き込まれます。入り口の壁には最も有名なマリー・アントワネットの絵と言っても過言ではないヴィジェ・ルブランの描いた肖像画も。(私ルブランの絵好きです、マリー・アントワネットのお気に入り宮廷画家、美人で波瀾万丈の人生歩んだ人)。この部屋、マリー・アントワネットの私物のドレスや当時の貴族の服がガラスケースに入って展示されています。全体的に鏡張りでまさに豪華絢爛!この時代はちょうどフランスが植民地などから収入で富んだ時代なので、その時風と彼女のスタイルがマッチしたのでしょうね。


マリー・アントワネットが結婚式の時に着用したドレスの例も展示されていました。(これ、マリー・アントワネットの私物ではなく、フランス風でかなりデザインが似ていいたとされるSuchess Hedvig Elisabeh Charlottaのものですが、雰囲気は味わえるかと!長いトレーンまで豪華で眼福でした)





これらのドレスはマリーアントワネットの時代の貴族がよく身につけていたものらしいです。


マリー・アントワネットの結婚式を描いたとされる扇。




2. 輝く女王(The Queen of Sparkle) | 232年ぶりに集結したマリー・アントワネットの宝石コレクション"
この展示はマリー・アントワネット所有のジュエリーがメインのコーナー。マリー・アントワネットはオーストリアから私物を持参し、フランス国内でも贈り物などでコレクションを増やしたそう。1791年にフランスから脱出しようとする際、多くの宝石が国外に密輸され、マリー・アントワネットの唯一の生存児、マリー・テレーズの手へ。女王死後232年ぶりにこの場で初めて一堂に会した装飾品もありました!









3. 女王のスタイリング(Styling of the Queen) | 王妃のスタイルを生み出した職人たち
マリー・アントワネットのスタイルには、それぞれ帽子職人や専門品の商人などが関わっていて、それぞれが今で言うスタイリストの前身のような役割を果たしていたとか。ヘアスタイリストのコーナーもあり、とんでもなウィッグからさらにとんでもなヘアスタイルのコンセプトアートまであり楽しめました。特に有名なスタイリスト、ローズ・ベルタンについても載っていました!(最近漫画になっていて日本でも有名ですよね)。







4. マリー・アントワネットにとっての魔法のような逃避: プチ・トリアノン宮殿(Marie Antoinette's Enchanted Escape: the Petit Trianon) | 郊外宮殿でのカントリー風なリラックスした衣装
豪華なファッションに囲まれていたマリー・アントワネットですが、このコーナーではほっと一息ついて宮廷から逃避するために利用していたプチ・トリアノン宮殿でのファッションが展示されています。これまでの華やかなファッションに囲まれた王妃のイメージとは違い、イギリスの田舎風なこの宮殿で、シンプルでリラックスした姿で子どもや夫と過ごすエピソードは、等身大の家族のようでほっこりしました。音楽が好きだったので、ここでコンサートとかもよく開催していたそう。ただ、この件でさらに国民の不満を煽って王室への反感を買ったという事情もあり、複雑な気分になるエピソードでもあると思います。










ここのエリアの次がマリー・アントワネットの評判が悪くなったときのエリアなんですが、それぞれの時代のマリー・アントワネットをイメージした香りのコーナーがあっておもしろかったです。華やかな宮廷時代の香りとか、プチトリアノン時代の優しい花々とハーブの香りとか。ただびっくりしたのが、処刑寸前の牢屋時代をイメージした香りもあって、下水+う◯この匂いするやるもあってびっくしました。エレガントな展示会でそこまでやるんか、ちょっと悪趣味じゃありません??(各時代でのマリー・アントワネットのイメージ変遷をテーマにしてる今回の展示会の趣旨とはあってるかもしれませんが...しかしうん◯の匂いわざわざ調合したんかと思うと...衝撃すぎるぞ)



おまけ
あと、わざわざ田舎風の場所って面白いですよね、確か何年か前にあったルーブル展の版画で、マリー・アントワネットが主催する仮装舞踏会で国王夫妻が田舎の平民の格好をしている絵をみたことあるんですが、ある意味庶民とめちゃくちゃ金銭感覚に差があったんだろうなあという気にもなります。プチ・トリアノン宮殿は行ったことないのですが、フランスのシュノンソー城に行った時も、わざわざ田舎風の建物を作っていました。かつての貴族ってそんな感じだったのかしら?よければ参考に旅行記どうぞ。
5. 邪悪な女王(The Wicked Queen) | 悪女」のイメージを作った風刺画
ついにマリー・アントワネットの人生に影がさしてきます。1780年代から始まった政治的・社会的不安定な状況で、マリー・アントワネットへのヘイトが集まりました。邪悪で享楽的な様子を描いた風刺画が作られるようになり、国民の王室への信頼を著しく損なうことに。あまりこのような風刺画が美術展にでてくることはない気がするので(どちらかというと博物館とか歴史系かも?)、こういう展示も併せて見られるのが興味深かったです。


6. 女王の死(The Death of The Queen) | 処刑直前の遺品まで展示(※閲覧注意)
この展示コーナー、人によっては気分が悪くなるかもしれませんので、お気をつけて。必要ならこの章飛ばしてください。1791年にルイ16世と逃亡しようとして捉えられ、国民からさらに反感を買う→1793年10月14日に革命裁判で有罪に→1793年10月16日12:15にギロチンで処刑されるまでの展示です。
デスマスクとか衣装まで残っていて、見ていて辛い展示です。死後もこうしてエンタメ消費されていたのかと思うと複雑な心境にも...。最後に残した言葉や侍女に預けた遺髪もあり、コレクションとしては貴重ですが、閲覧は注意かと思います。個人的にはこういう展示があると知らなくてショックを受けました。ただまあ見方を変えれば200年以上前の人の歴史的な記録や遺品が残っていてこうして外国でも展示されているのすごいですよね。








7. マリー・アントワネット: 記憶の中で 1800-1940年(Marie Antoinette: Memorialised 1800-1940) | 悪印象回復の裏側
死後も悪い印象のあったマリー・アントワネット人物像を変えるきっかけになった人物こそ、フランス皇帝ナポレオン3世の皇后、ウジェニー。マリー・アントワネットと同じく外国出身の彼女は、マリー・アントワネットに親しみを抱くと同時に、自身とマリー・アントワネットのイメージ向上のための活動を行うのことに。悲劇的な運命を辿った王妃をロマンチックに描き、ヴェルサイユ宮殿への関心を高めることに繋がりました
。自身も優雅でファッションリーダー的存在であったウジェニーは、マリー・アントワネット時代のファッションを積極的に取り入れるようになり、マリー・アントワネットの展覧会も開いたりしました。20世紀初頭までには、18世紀のフランス美術のコレクション収集が人気になったり、マリー・アントワネットのスタイルがシンボル的に扱われたりしたそうです(仮面舞踏会でマリー・アントワネット風の衣装きたりとかも人気だったらしい!)。このコーナーではウジェニーのコレクションや当時のファッションの展示がありました。









8. 魔法と幻想(Enchantment and Illusion) | 戦後、人々が夢見た「マリー・アントワネット」
このエリアは、マリー・アントワネットのスタイルがリバイバルする中で、特に第一次世界大戦直後での扱われ方についてのコーナーです。第一次世界大戦からの復興を遂げる中で、人々は常に死や困窮と隣り合わせでした。それと対比させるように、マリー・アントワネットの生きた18世紀のフランス黄金時代とマリー・アントワネットのスタイルは、辛い現実からの逃避、魔法、御伽話的な幻想と結びつくようになりました。その頃のイラストやファッション、ジュエリーが数多くありました。ロマンチックでかわいらしいモチーフが多いマリー・アントワネットのスタイルは、まさに魔法や希望の光のように見えたのかもしれません。




9. マリー・アントワネットの再アイコン化(Marie Antoinette Restyled) | ディオールからリアーナまで──現代に受け継がれるマリー・アントワネット
こちらは、今なお多くの人を魅了し続けるマリー・アントワネットのスタイルが、現代アートやファッションに及ぼしている影響を扱ったエリアです。華やかさと悲劇、洗練と退廃を想起させるファッションで有名なマリー・アントワネットのスタイルですが、1990年代では、女性のエンパワメントや大胆さとも結びつき、さらなる進化を遂げます。魅力的な悪女というイメージも新たについてきます。



世界的に有名なブランドが勢揃いしていて、例えばディオールとかもありますし、米歌手リアーナのブランドもありました!マリー・アントワネットをテーマにした映画や音楽の展示もあり、永遠な文化的アイコンとしてのマリー・アントワネットのパワーを存分に感じられました。













ディオールのジュエリーもありました。18世紀風のイメージのコレクションで当時の技術(燻銀でジュエリーを目立たせるとか)の手法が使われているそう。



展示の最後に、マリー・アントワネットの有名な一説がありました。"We have dreamt a pleasant dream, that is all (マリー・アントワネット、2月/3月 1793年)"
10. お土産コーナー | 現地vs日本限定グッズ比較
特別展のグッズ、現地でも展示の終わりのエリアで売っていました。可愛かったです。ただ結構お高め...(トート5千円くらいしました)。





ただ、日本の展覧会だと、日本限定グッズ(しかもイギリスよりかわいくてお安い!!)も売ってるそうなので、日本での展示も是非楽しみにして欲しいなと思います。パッと公式サイトを見た感じ、日本限定のものはコラボグッズ系が多そうです。例えば青山デカーボコラボのクッキー缶やチャーム、ベルバラやハローキティ、近沢レースとのコラボのグッズは日本だけだと思います。というか、少なくとも公式サイトに載ってるのはほとんど限定だと思います、私は現地で見かけませんでした。一度イギリスで見た私みたいな方が横浜でもう一度行かれても楽しいのでは!日本での公式サイト↓をぜひチェックしてみてください!
感想
この展示では、時代と共に変化していくマリー・アントワネット像を堪能することができて大変満足でした。特に、なかなか一堂に会することのない彼女の私物が一つの場にあるまるというのは、それでも意味深いと思います。ここまで見せるのかという展示(処刑の衣装とか)もあり、死後もエンタメ的消費をされているという見方もできるかと思いますが、それでも最近はそれこそ色々な見方をすることができ、今なお様々な分野で影響を及ぼし続けるというは、それだけアイコニックな存在だったということでもあるかなと。
また、マリー・アントワネットのイメージが、特にポジティブな意味で変化した時、その裏では立役者的な人がいたということも痛感しました。親しみを込めて彼女のファッションスタイルを回復させたウジェニー皇后や、インスピレーションを受け続けるファッションデザイナーたち、そして、日本だと特にベルバラの池田理代子先生。ネガティブなイメージがつくのは一瞬ですが、そのイメージが変わる裏で、世間と異なった見方をした人々の力を感じました。また、例えば第一次世界大戦の時に、現実からの逃避として彼女のスタイルが人々の精神的慰めになっていたことは、金の消費で物理的に国民が苦しんでいた生前の頃とは真逆ですよね。ある意味皮肉的状況ではありますが、一方でファッションのただ着用するだけではない、精神的部分での魅力というかパワーを感じました。
また、展示を見て、キュレーターのマリー・アントワネット愛に溢れているなあと感じました。稀代の悪女イメージからの払拭というか。なので、逆に、この展示はイギリスだからこそできたのかなとも思いました。私、フランス人の友人が何人かいるんですが、基本的にマリー・アントワネットは悪女で、嫌われ者。なんなら殺してやって自由を勝ち取ったぜ、というような日本人の私からするとかなり血生臭いことを誇りに思ってることが多いんですね。個人的に私はマリー・アントワネット好きで、彼女の悪い噂は大抵尾鰭がついていたり、オーストリアの田舎女とバカにしていたくせに、革命の時には彼女の首取ったことが一番シンボリック化されているフランスに対してちょっとどうなのとずっと思っています。なのでかなり偏った意見なのですが、これフランスでやるのはかなり厳しかったんじゃないかなあ、と。あと、巡回展とのことですが、現時点では日本しか発表されてない展示なので、世界的にもベルバラでかなりマリー・アントワネットに良いイメージである日本だからこそのコラボでもあるかなあと思います。(裏でどんなやりとりがあったのか私は知りませんが)。
豪華なドレスそのものよりも、「これが当時の流行を生み出した実物なのか」と思うと、ファッション史の転換点を目の前で見ているような気持ちになりました。
最後に
8/1からの横浜での展示は、アジア巡回展のためにイギリスの展示から再編成され、日本国内の関連展示品も20点加わるそうです。豪華な展示、日本だとあまり見ないような斬新でインタラクティブなイギリスの展示方法(どこまで再現されてるか分かりませんが)、横浜でこの機会にぜひ味わってほしいと思います!
ここ数年は年に数回ほどヨーロッパの美術館や博物館の特別展に行っているので、少しずつ今までの記録をアップしていければと思います。どうぞよろしくお願いします。
























































































































































































